正しい年の取り方

人生に迷うアラサー男が年相応になるまでの雑記

エトス バトス ロゴス ワロス

突然だが、私は明日、とある人にスピーチの仕方を教えなければならない。これって一体何の仕事なんだろう……。

今回はその前に自分の中で指導内容を整理したくて記事にした。

今回の記事は他人に物事を納得させるのが苦手な方にも参考になる内容だと思う。

 

周辺情報

そもそもその人はどんな人かというと、仕事柄あまり人前で話すことがない男性。私より3,4歳若く見た目は真面目だ(中身もマジメ)。ただちょっと人前で話すことになれていない感はある。聞く相手として私を選ぶあたりはセンスがないと思う。

 

スピーチ内容にはテーマがあって、「普段の仕事で頑張っていること、気付いたこと」といったもの。聴衆は同業種の方々。なんか採点されるらしいよ。主張に対して納得してもらうことで点数が高くなる。そして彼は高得点を目指している。

多分彼は私にスピーチ内容の添削を期待している。話す内容についてあれこれ案を練ってくるんだろうけど、そこに口を出すつもりはない。多分そこだけ口を出しても意味はないんだよな。

 

なぜ意味がないと思うのか、それはスピーチなんてものは(もっと言うとコミュニケーションは)非言語の部分でおおよそ決まってしまうからである。人を納得させるための重要な情報は話す内容だけではないのだ。

 

では納得感を補強するものは何だろうか?それはエトス・バトス・ロゴスと呼ばれるもので、順に信頼、情熱、論理を意味している。そしてこれらは大抵どのスピーチでも取り入れられている。

これは想像だが、彼に指導すべき内容はこれではないかと思う。求められているものと本当に必要なものは違う。

指導する前に自分の中で整理したい。実例を交えながらエトス・バトス・ロゴスについて触れる。

 

エトス

話し手が「いかに自分を信頼できる人間であるか」を示すこと。聞き手の納得を引き出すのに重要だ。よれよれのシャツを着てヒゲを生やしっぱなし、背筋を曲げて偉そうなことを言われても相手にされない。

実例を挙げる。私とは別部署の品行方正で通っている管理職がいる。周りからの信頼も厚い。そんな彼だが、昔社内の別部署の人と仕事の進め方で論争になったらしい。管理職はAという方針、別部署の人はBという方針を提案した。主張自体は相手方の方が正しかったらしいのだが、当時はその管理職を支持する声が多かった。

聞くところによるとその人は当時ぽっと出で、周りとの信頼関係が築けていなかったらしい。信頼関係の築けていた方が比較対象として優れていたために、正否を通り越して支持が集まった。

 

短期的な機会であるスピーチと並べるには不適な実例ではあるが、信頼が人々にどう映るかを示す例にはなると思う。

スピーチの場という短時間で信頼できる人間であることを示すにはやはり身ぎれいな恰好で背筋を伸ばして大きな声で話すといった当たり前のことが必要になる。当たり前だけど難しいよね。

 

バトス

私は話し手の伝えたい熱量だと思っている。怒り、悲しみ、悦び……そういった感情の動きというものは聞き手に納得を与える。

これも実例を挙げる。実は以前にも同じ趣旨のスピーチ大会があって、そこで見たのが「周りの人にきちんとあいさつする」といった内容を10分間、受け止めきれないほどの熱量で情感を込めて話し切った方。その方はその大会で最優秀賞に輝いた。

内容としては一番稚拙なものである(失礼ながら)。他の発表者は筋道を立てて仕事の仕方、ひいては仕事とは、組織とはこうあるべきだというべき論まで展開する方がいたが、あえなく撃墜。いかに情感を込めるかで、伝わり方が異なる例だと思う。

やはりスピーチ時には話す内容に合わせた情感の込め方が求められそう。演劇かよ。

 

ロゴス

論理である。当然ながら、話す内容が支離滅裂では納得を得る以前の問題となる。

これに関しては実例を挙げるまでもないと思う。補足するならば、上の例では「周りの人にきちんとあいさつする」といったことだけを話し切っただけで、そこには論理と呼べるほどのものはないように思える。しかし、間違ったことは言っていない。ロゴスがない=反しているというわけではなさそうだ。

ロゴスは反していなければいい、程度で良いかもしれない。

 

ここまで書いてきて、エトス、バトスは聞き手を納得させる上でロゴスより上位ではないかという気がしてきた。

現代は「何を言うか」よりも「誰がどう言うか」が尊しとされる時代だからだ。

 

ワロス

と同時にこれら3つだけで本当に良いのだろうか?彼はスピーチを乗り切れるだろうか?と考えたときに出てきた言葉が「ワロス」だった。

スピーチは短期決戦である。短い時間でエトス・バトス・ロゴスを示すことで聞き手の納得につなげるわけだが、特にエトスなんかは限界があると思う。普段からの積み重ねではなく第一印象だけで決まってしまう。より聞き手を引き付けるために必要なもの、補強するものがあっても良いのではないかと思った。それが「ワロス」、笑いである。

 

とりわけスピーチではつかみの部分に笑いを持って来れば興味を持たせられそうな気がする。内気な彼は嫌がるかもしれないが提案してみたい。