正しい年の取り方

人生に迷うアラサー男が年相応になるまでの雑記

初夏の候、女医に肛門を見せる~内視鏡検査6,600円~

こんばんは。

 

ここ2週間くらい下痢が止まらなかった。正確にはまだ下痢は続いているのだが、回数が収まってきたところである。下痢の経過としては最初の1週間は下痢が8回/日程度、その後は回数が4~5回/日程度と収まったものの、血便が出るようになってしまった。日に日に便器が夕焼けばりに赤く染まっていった。

 

日ごとにお腹左側の痛みが強くなり、体を動かすのが困難になってきた。困難になったのは半分は痛みのせい、半分は体を動かしたことをきっかけに排便が促されるのではないかという不安のせいである。

 

この症状については前から知っていた。

 

私は潰瘍性大腸炎という難病にかかっている。調子が良くなったり悪くなったりというのを繰り返す病で、薬を飲むことで再燃と呼ばれる発症状態になるのを抑えている。

 

社会人2年目の途中で発症した。病休し入院していた時期もある。痛みとしては当時の方が強かったが、どうも痛みというものに対する耐性がガタ落ちしているようで、耐えきれずにかかりつけ医のいる病院へと向かった。

 

向かったのは月曜日の午前。受付時間が始まってから連絡し、血便が出ていることを伝えたところ、午前中に来てほしいと言われた。まさか診察を受けてもらえるとは思っていなかった。というのも、以前同じように辛かったときに「担当の先生が外来受付する火曜日まで耐えてもらえませんか?」と言われたことがあるからである。今回診察に至ったのは血便が出ていることを伝えたからかもしれない。

 

意外と痛みのない時間帯も長かったのだが、移動中に漏らさないか不安で頭がいっぱいだった。40分かけて無事病院までたどり着いたとき、本当に安心した。

 

月曜日は予約のある内視鏡検査をする日で、検査室?で問診が始まった。

担当の先生は前回診察時から若い女性に代わった。どうもこの病院では大学病院と人を入れ替えているらしく、定期的に先生が代わる。見た目を形容できる芸能人等は思いつかないのだが、昔好意を寄せていた女性に似ていた。年齢は多分私と同じくらい。

 

1日にどれだけ排便があるのか、血はどれだけ出ているのか、腹痛はあるのかといった問診だったと思う。答えるのは恥ずかしかったが、相手も仕事である。

ちなみに腹痛を確かめる際にお腹へ不意に繰り出されたグーパン(ソフトタッチ)が痛くて悶絶した。ついでに言うとお腹触られるなら瘦せときゃよかった。

多分、先生は悶絶を見た時点で内視鏡で詳しく検査することを見据えていたんだろうと思う。

 

聞き取りが終了し、血液検査をすることになった。(どの指標か忘れたが)体内での出血がどのような状態か測る指標があり、まずそれを確認し、その指標によって内視鏡検査をするか決めようという話になった。

 

採血。私の腕は特別太いというわけでもないのだが、血管が見つかりづらい。入院中も通院中も看護師さんを困らせたものである。今回もまさにそうで、(恐らく)新人の看護師さんが右腕で失敗、ベテランさんへとバトンタッチ。なお、ベテランさんも1回失敗した。どうなってんのや、ワイの腕は。

経験として分かっているのが、何かに集中しているときはお腹の痛みを忘れられる。ということで詰将棋を解いて採血の結果を待っていた。長かったと思う。

 

血液検査の結果、某指標は基準値を超えており、大腸の出血はほぼ間違いないとされた。具体的にどのような状態なのか確かめるため、内視鏡検査を行うことになった。

 

内視鏡検査は通常、患者側が事前に下剤を繰り返し飲んでは排便、飲んでは排便という行為を繰り返し大腸の中を空っぽにしてから行う。

その日私は朝食を食べていなかったものの、下剤を飲んではいなかったため、大腸の中が非常に見えづらい状態になっていた。そこで浣腸して出せる分だけ大腸の中身を出してから内視鏡検査をすることになった。

普段は下剤を使ってからの検査しかしていなかったので初めての経験。ちなみに浣腸も初めての経験。

 

浣腸は内視鏡検査用の服に着替えてから行った。服は上下セパレートで、検査で汚れないために着用する。内視鏡検査では肛門から内視鏡を入れるため、後ろに穴が開いたズボンを履くことになる。当然下着は脱ぐ。ということで全裸with靴下の変態スタイルで検査服を上から被ることになる。

場末の銭湯みたいな着替え用のロッカーが備えられており、鍵もかかるためプライバシーは守られている。

 

どうも浣腸は看護師さんの付き添いの元多目的トイレで行うらしく、順番待ちであった。看護師さんが先生に「浣腸部屋待ちですw」と伝えていたのを見るに、職員の方の中では検査室近くの多目的トイレとは浣腸部屋なんだなぁと、仲間内でしか使わない言葉を知ってちょっと勉強になった。それにしてもお腹は痛かった。いや、痛い時間より倦怠感で体がヘビーに感じる時間の方が長かったのだが。

 

浣腸部屋が空くと看護師に連れられるまま入室した。中には非常に簡易なベッドとよく見る便器があった。ベッドがある多目的トイレは初めてである。浣腸部屋なのか、はたまた囚人部屋なのか、ヤリ部屋なのか。

 

呆然とする私に看護師は説明を始めた。

看護師「浣腸は初めてですか?」

私「はい……」

 

手順としては私が膝を曲げてベッドに横たわる⇒看護師さんが肛門に挿して注入⇒看護師さんが退室⇒便を我慢しながら便座へ移動⇒我慢できるだけ我慢して解き放つ⇒便は流さずに看護師さんにどのような便が出たかを報告する

 

肛門に挿されるのもなかなかだが、便を報告するのが辛かった。これ自体は入院初期にもあったのだが、久しぶりすぎて恥の概念が再形成される音がした。

 

時間をかけても仕方がないので、横になって浣腸液を待つことにした。肛門に穴が刺さるも、意外に抵抗を示さなかった。もう数多の内視鏡検査で異物を肛門で受け止めるのには慣れてしまっているのである。液体が静かに腸を駆けていく。浣腸とはすごいもので、注入後すぐに便意の波動を感じた。

 

いやキツイって。もう出ちゃう。やばたん。

 

外で待つ看護師さん。ときに風俗では浣腸後にブツが出てくるまでお姉さまに見つめられるサービスがあるらしいが、ここは公的な場所。外で待っている。

 

ここで辛抱強く待てた自分に驚いた。長らく弱い腸と付き合っているからか、肛門括約筋は超人並みに成長している。

 

出たのは下痢状でやや血がついた便であった。

看護師「普段出る血もこれくらいでしょうか?」

私「いや、もうちょっと出るというか、血がシャーッて出る感じですね」

冷静に自分のうんこを評論することができた。

 

かくして条件が整ったので内視鏡検査を行うことになった。緊急でやってきてしまって病院側に申し訳ない気持ちになる一方、この期に及んで「嫌だな」という気持ちをぬぐえなかった。何しろ内視鏡検査は痛いのだ。過去に数回受けているが、楽しかった経験はない。一番最初に病院に行ったときはオジサン先生が「ほら~画面を見てみなよ~大腸の中がすっごくただれてるよ↑↑↑」と懇切丁寧に解説してくれたのを覚えているが、あの大腸探検ツアーも楽しくはなかった。

 

検査にあたり、浣腸と同様横になり膝を曲げることになる。この時点で服の穴から私の二山は見えてしまっている。

検査の手順を述べると、患者が横になる⇒肛門周辺に麻酔を塗る⇒管を肛門から挿入⇒管をうねうねさせて大腸の中を撮影する⇒管を抜く という入れたものを抜くだけの簡単システム。

 

それにしてもなんて恥ずかしいのだろう。特に親しくもない同世代の女性に肛門を見せなくてはいけない。しかし私が辛そうにしていても仕方ないのである。本当の被害者は先生だ。彼女は医者だ。きっとたくさんの命を救いたいとか、苦しむ人を救いたいという思いのもと、医者になったはずだ。そんな彼女がしがないアラサーの肛門を見せつけられている。彼女は決してこの肛門を見たいがために医者になったわけではないのに。

 

先生「じゃあ入れますね」

私「うぬぅ……」

 

何度か入れるうちに私の肛門は管を受け入れること自体はたやすくなったが、それでも痛いものは痛い。何なら麻酔を塗られているときから痛い。肛門は出口であって入り口ではないのだ。小学生でも分かる。

 

お腹の中で管が蠢く感覚、痛さは形容しがたいのだが、肛門側から大腸方面へガスが送り込まれているかのような圧迫感を感じる。これも辛いのだ。

 

今まで内視鏡検査をしてくれた先生方は無口か大腸実況するかの二択だったのだが、今回の先生は「大丈夫ですか」「痛いですか」といった声をかけてくれた。これが本当に安心した。カメラ映像から大腸の様子を見ることを強要しないのも良かった。

 

ちなみに今回の検査で初めて①深呼吸するといい、②目は瞑ると管に意識が集中してしまうから目を瞑らない方が良いということを教えてもらった。なんで先代の先生&看護師さんは教えてくれんかったんや……。

 

私があまりに苦しそうにしていたせいか、先生と看護師が「痛そうだし、この辺でやめておきます?」と話していた。

え!?「痛そう」なんて理由で辞めても良いの???という喜ぶべきか疑うべきか分からないぐちゃぐちゃした感情VS大腸の痛みVSダークライ って感じだったのだが、今思えば症状があまりにひどいのでこれ以上見ても仕方がない、痛がってるし辞めるべきだという判断だったのだと思う。

 

キュポン……という音がしたかしなかったか、管を抜き終わり、検査が終わった。検査後はいつも放心状態である。何か大事なものを失ったような気持ち。その大事なものの正体が分かる日は来るのだろうか。

 

検査後は着替えてもう一度問診を行う。問診では悪化していること、強めの処置を取る必要があることを伝えられた。入院時に使用していたステロイド系の薬を服用することとなった。正直乗り気ではないのだが、状況が状況だけに仕方がない。

 

こうして診察から検査まで終わった。今後は今まで飲んできた薬に加えてステロイド薬を飲んで経過を見て行くことになる。この記事を執筆時点で便の回数は変動なし、血の量は確実に減っている。やはりステロイド系の薬はよく効く。もっとも、あと何回使えるか分からないが……。

 

例によってオチはない。