正しい年の取り方

人生に迷うアラサー男が年相応になるまでの雑記

東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか? 読書感想文

こんばんは。

 

この本は東大生が外部の人から持たれているイメージを中心に、東大生がなぜ「一応」を頭につけるかを調査・考察している。

 

www.amazon.co.jp

タイトルが気になって手に取ってしまった。この本に出会うまでは東大生が「一応、東大です」なんて言うことを知らなかった。東大卒が周りにいないためである。

 

だが、この本を読んでみると、この「一応」問題は東大生だけの問題ではないと感じた。

 

第1章から触れる。

この本が発売された当初はドラゴン桜がブームになっていた頃である。漫画だけでなくドラマになったことは私も覚えている。阿部寛が主演だったなあ。そしてこのドラゴン桜が東大ひいては東大受験を加熱させたことについても当然触れている。

 

05年12月25日付の読売新聞によれば<駿台予備学校が11月に実施した東大入試実戦模試の受験者数は前年より20%増加。代々木ゼミナールの東大入試プレテストは前年比9%増、河合塾の「東大即応オープン」も前年比23.6%増で、予備校関係者は、近年になく東大志望者が増えていると見ている>とのこと……(中略)……マンガの影響力の大きさを示す事例は枚挙に暇がないが、この「東大志願者2割増」のニュースにはちょっと驚いた、というか笑った。みんな結構、乗せられやすいのね。

東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか? 22~23Pより抜粋。

 

当時の受験模様は知らなかったが、2割増えたのは驚きだ。それは入りたい人が多いってことだしなんだかんだ東大の評判って悪くないのかな。

ためしてガッテンで特集された食品みたいな扱いじゃん。

と思っていた矢先、次の節では東大の叩かれようを目の当たりにする。

 

次の節では様々な週刊誌が東大を(理由の多くはこじつけ)で責めるような記事について触れる。そういう記事の総数ってよく分からんけどさ、実際見かけるし、少なくとも私の出身大学よりかは目にする機会が多い。

ちなみにこの節が一番面白いと思う。数々のこじつけに対して著者が細々と疑問を交えながらツッコミを入れていくそのテンポが良い。

 

さて、第2章では出世や結婚など東大生の人生の歩み方について触れているが、特に触れたいのは東大女子が結婚しにくいということだ。

 

が、悲しいかな、東大女子は「東大」というだけで引かれてしまうことが多いという。

東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか? 148Pより抜粋。

えー!そうなの???

私ならば自分より高学歴の嫁さんでも構わないところだが、どうも世間の男性(少なくとも出版当時の男性)はそうではなかったようだ。

だって東大に入れたってことは頭が良かったり努力が出来たりするってことでしょ?それってどう考えてもプラスの判断材料だと思うんだけど。トレードオフなのかな。

 

第3章では東大生の持つコンプレックスを解き明かしていく。

そう、彼らは「東大生として見られたくない」というコンプレックス、並びにそう思って行動するが故に逆に東大生として見られてしまうというジレンマに陥っている。

周りからの東大生のイメージとの格闘でもある。

この部分について、学生のときの自分ならわからなかったかもしれないけど、社会人になった今なら少しだけ分かる。

 

「○○社の人間なんだから」とか「公務員なんだから」といった肩書で見られる機会ってどうしても増えるし、そうじゃなくて私個人を見てほしいという気持ちになることもある。そう思っちゃうのは子供なのかもしれないけど。

 

第4章ではこの本のタイトルについている「一応」がなぜ発生するかを述べている。

これ、読む前は自信のなさ、謙遜から出てくる言葉だと思っていたけどどうもそれだけじゃないみたい。「言わせないでほしい」という甘えもあるのかなと個人的には思う。

まぁそれはともかく、以下の言葉に著者の言いたいことが現れていると思う。

 

思うに、「一応、東大です」という言い方は、「東大」という肩書に自分が負けてるからこそ出てくるのだ。

「一応、東大ではありますが、東大という肩書だけで自分を判断しないでください」

そんな気持ちが「一応」には含まれている。「一応」と留保をつけることで、予防線を張っているわけだ。

 

 東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか? 256Pより抜粋。

 

商品の注意書きだよなぁ。

実は私も「一応」という言葉を使うことがある。例えば仕事のときもそうだし、将棋で段位を聞かれた時にも「一応、四段」と言ったりする。

別に私に向けて言われている言葉でもないのになぜか刺さった。それはやっぱり言われる通り、肩書に負けているからだろう。それに伴う実績があれば変わるかもしれない。

 

この記事の冒頭で「一応」問題は東大生だけではないと言ったのはこういうことだ。相対的に誰かより上に立つということは、他人から視線を浴びる機会も多いということ。

ある意味叩かれる覚悟も必要なんだけど、それを乗り越えるには実績を出すか、自分が本当にやりたいことに打ち込むことしかないのではないか。

 

ところでこの本、下段部にある用語解説も事実の羅列ではなく著者の主観が入っておりこれまた面白い。単純に読み物として面白い本だった。