正しい年の取り方

人生に迷うアラサー男が年相応になるまでの雑記

「マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?__クーポン、オマケ、ゲームのビジネス戦略」の感想文

paypay~~~!

 

dramadmara.hatenablog.com

 

PayPayはあれ以降あまり使っていないんだけど、よくよく考えるとポイント還元と似たようなもんだから、2割のバックは割引率を改めて計算してみると2割引きにはちょっと劣るんだよね。

 

ということで標題の本を読んだので感想を書きたい。

 

この本は価格戦略について述べた本だと謳っているが、その実、経済学の基本を教える本だと考える。

作者が述べる通り中学生が理解できるように、テーマにクーポン、オマケ、ゲームという子供になじみやすいものをストーリー仕立てで取り上げている。

 

大人向けの本でもストーリー形式は多いが、特に具体例が分かりやすい。一般に説明は具体的であればあるほどわかりやすい。その反面、応用が利きにくいのだが、この本は具体例を応用した理解に転化させるのが上手い。章の最初に大筋を示しているからだろうか。

 

大人が読むのと子供が読むのでは印象が異なると思う。なぜならば子供は自分でお金を稼いで経済活動する層が非常に少ないから。消費する局面の方が多い。

私は売り手側の視線でこの本を読んで仕組みを理解できて楽しめたが、子供からすれば消費者側の目線に立って「この商法はえげつない」と気持ちが先行する場面もあったのではないか。

 

さて、特筆すべきはこの時代(2010年)においてホットなトピックスだっただろうAKB商法をトップバッターに据えている点である。別にAKB商法はAKB48の登場以前からあった売り方で、本書でもオマケ商法と呼ばれている。

 

このオマケ商法が頭の章にあるから、本屋でたまたま手に取った人も思わず買っちゃったんじゃないかな。

 

このオマケ商法の仕組み、つまり転売すらも強かに利用する仕組みが説明されている。詳しくは本書を読んでほしい。これを読んだら自然に次の章も読みたくなる。

 

1~6章で価格差別の話をしているが、その下地として必要な顧客情報についての話をしているのが標題にもなっている7章「マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?」だ。

 

よくよく読み返すとこの章の名前をそのまま本のタイトルにしたのは大正解だったと考える。マクドナルドのケータイクーポンの目指す先が単なる自己選択型の価格差別ではないということ、稼働率の平準化に寄与するなど、サービス業の欠点を克服した完全な価格差別を目指せるものなのだ。価格差別の話をする本書で言いたかったことの集大成にも思える。

 

さて、この本は様々な矛盾を示している。

 

例えば企業の商品をより売ろうとする場合、往々にしてその対象は買うか買わないか微妙な層であり、それに合わせた商品開発をすると従来のコアなファンの意向からそれた商品が出来上がること。

また、有用なもの、必要なものよりもその価値があいまいなものの方が儲けやすいということ。

 

この2つは特に言葉で表されるとその通りだと感じた。本書は基本的に感情抜きで読めたんだけど、有用なものが儲からないという点については不満というか、納得できなかった。理解はもちろんできるんだけどね。作者自身、これについて触れる段では個人的な見解が強いように感じられた。

 

当然付加価値は高い方が儲かるんだけど、もとの外部調達分って誰かが作らなくちゃいけないじゃん。それ(材料)を作る人たちが儲からなかったらどう思うだろう。私なら辞めている。そういう人たち(一次産業とか?)が報われるような仕組みが経済とはまた別の世界で必要なんだろうと思う。

 

でも材料が高いと付加価値が加わり、我々の手に届く段階の商品の値段は当然高くなっていく。社会的なニーズにマッチしない。

 

なんかもやっとしちゃった。

 

例えば農業みたいな産業を「補助金漬けだ」なんて言えなくなったなぁ。経済学からは離れるかもしれないけど。

 

最後に改めて。

本書は消費者、売り手のどちらの目線でも楽しめると思うのでぜひ読んでみてほしい。